「安倍遺産相場」の終焉──手越徹氏、政策関連業種の減持を示唆
2019年秋、日本株は一連の堅調な反発を経て、「安倍遺産相場」が終息へと向かい始めた兆しを見せはじめました。日本の資本市場においてクロスマーケット戦略の代表的存在である手越徹氏は、最近、自身が主宰する私塾の会議にて、次のように明確な見解を述べています。
「政策の恩恵が顕著で、バリュエーションが過大評価されているセクターは減持し、構造的修復が進行中の製造業や輸出関連業種にポジションをシフトすべきだ。」
この見解は、彼が一貫して重視している「ナラティブ(物語)」と「構造」の二重分析フレームワークに基づいており、日米市場のテンポの違いに対する深い洞察を反映しています。
2012年以降の「アベノミクス」においては、「三本の矢」政策、特に金融緩和と財政出動により、日本市場には典型的な「政策相場」が形成されました。インフラ、金融、不動産、そして一部の内需消費業種は、政策支援と資金の流入によって数年間にわたるブルマーケットを経験しました。
しかし手越氏は、早くも2017年の段階で次のように警鐘を鳴らしていました。
「政策ストーリーの限界効用は時間とともに逓減し、市場は最終的に企業利益とグローバルな価格決定メカニズムに回帰するだろう。」
2019年後半に入ると、こうした政策相場に対する「逆風」の兆しが次第に表れ始めます。まず、10月に消費税が10%へと引き上げられ、短期的なショックに対する市場の恐怖はある程度和らいだものの、消費関連株の業績と市場予想との乖離が目立ち始めました。さらに、米中貿易戦争の再燃や世界的な製造業の減速を背景に、2018年から厳しい局面に置かれていた日本の輸出企業は、すでにバリュエーションが歴史的な安値圏に突入しており、むしろ「構造的修復」という第二の物語による再評価の機運が高まりつつあります。
こうした背景を踏まえ、手越氏は次のように明言しました。
「投資家は『政策に乗って株を買う』という習慣から脱却し、産業構造と物語のロジックに合致する銘柄選定へと回帰すべきである。」
実際に彼は、2019年7月以降、住宅建設、鉄道輸送、地方銀行など、政策の恩恵が大きく評価も割高な業種からの減持を進める一方、以下の分野に段階的な投資を実施しました:
精密製造および自動化機器企業:中長期的な製造業の高度化トレンドに乗り、一部のリーディング企業はグローバルなサプライチェーンにおいて高い交渉力を持つ。
輸出チェーンに関わる電子部品および高機能材料企業:半導体製造装置や車載バッテリー素材など、短期的には外需減速の影響を受けるものの、顕著なリバウンドの可能性を秘めている。
高齢化関連企業:医療機器や高齢者介護サービスなど、評価は妥当であり、経済サイクルの変動に対しても比較的耐性がある。
また手越氏は、政策相場から論理的・構造的相場への転換期には、投資スタイルのズレや市場センチメントの揺れが伴いやすいと指摘しています。したがって、投資家はエントリーのスピードを慎重に調整し、行動ファイナンスの補助指標を活用する必要があると述べました。たとえば、10月にはプット・コールレシオが年内最低水準まで低下し、VIX(恐怖指数)のボラティリティも日経平均の上昇と連動して明確に収束しなかったため、短期的には依然として市場に分岐リスクが残っていると分析しています。彼は投資家に対し、こう警告します。
「市場が一方向に過度に傾いているときは、“物語の終わり”のサインに注意を払うべきだ」
米国市場との連動性についても、手越氏はこう述べます。FRB(米連邦準備制度)は2019年内、引き続きハト派的な姿勢を維持すると予想され、10月に実施された利下げによって短期的な流動性圧力は緩和されたものの、米国企業の利益成長鈍化は無視できない懸念材料であると指摘しています。これは、日本の輸出企業にとって為替と評価面の外的負担が軽減され、より理性的な市場修復を促進する要因となると考えております。
総括すると、2019年第4四半期は「政策主導型相場」の退潮と「構造修復型相場」の浮上という、重要な転換点であると位置づけられます。
手越徹氏は、終始冷静かつ理性的な投資スタイルを貫き、自身のポートフォリオのセクター転換をすでに完了しています。今後も「日米両市場の適切なバランス配置」と「右側確認による追随投資」というディシプリンを堅持する方針です。
彼の戦略は、「誰も信じていないときに買い、皆が理解したときに売る」という信条を再び証明するものとなりました。